ITコンサルタントとは ~ITコンサルの仕事内容がコンサルでない理由~

コンサルタントになりたかったのにITコンサルタントになってしまった。ITコンサルの仕事内容がコンサルティングでない理由を書くブログ。

ITコンサルタントと派遣社員の違い ITコンサルの仕事内容は派遣と違うのか

就職や転職の文脈では「ITコンサルティングファーム」という単語がよくつかわれるが、就職や転職を一歩離れると、いわゆる「ITコンサルティングファーム」はシステムインテグレーターアウトソーシングと呼ばれる。ITコンサルタントになる人は、このことを忘れてはならない。

あらかじめ断っておくが、この記事は特定の企業を貶めようと思って書いている記事では断じてない。

あるニュースサイトの記述を参考にしながら、ITコンサルタントという職業について客観的に述べた記事である。

アウトソーシングの大手アクセンチュア

まずは、ニュースサイトから引用したこちらの文章をご覧いただきたい。

システムインテグレーションやアウトソーシングの大手Accentureが、米テキサスに拠点を置くコンサルティング企業Structureを買収した。金額などの詳細は公開されていない。

ZDNet Japan 「アクセンチュア、エネルギー業界向けコンサルのStructureを買収」 https://japan.zdnet.com/article/35058682/

ZDNet Japanは、アクセンチュアを「システムインテグレーションやアウトソーシングの大手」と書いているのだ。この記事を読んでいる方の中には「ITコンサルティングファームとして有名なはずのアクセンチュアがシステムインテグレーションやアウトソーシングの大手と書かれ、よくわからないStructureとかいう会社がコンサルって書かれてるんだ?」と感じた方も多いのではないだろうか。就職活動などにおいては、アクセンチュアはITコンサルティングファームとして捉えられていることが多い。だからそのような疑問を持つのは仕方がないといえる。

システムインテグレーションはまだ納得できる。IT系のコンサルティングファームなのだから、システムに関する会社であると書かれていても違和感はないだろう。しかし、それと並列にか書かれているアウトソーシングとはいったい何を指しているのだろうか。気になる方も多いと思う。

アウトソーシングについて説明する前に、念のためもう一度書くが、この記事は特定の一企業に関して述べようとしているものではない。このニュースサイトからの引用をもとに、IT系のコンサルティングファームの実態を考えたいだけなのだ。

コンサルタント派遣社員の違い

本来職業に貴賤はないのだが、自分や家族のキャリアとなると堂々と貴賤をつけるやつがいる。人と比べて優れていたいというのは生存本能のようなものだから仕方があるまい。その代表例が派遣社員だ。安定しないなどと言われ世間からの評判は良くない。

派遣の制度について詳しくない人もいらっしゃるだろう。まず、派遣社員には2種類いることを知ってほしい。

1つが非正規雇用派遣社員で、一般派遣と呼ばれる派遣社員だ。単に「派遣」というとこの人たちを差す。特定の会社に勤務せず、指示された企業に派遣されて働き、契約期間が切れると解雇される。派遣切りなどと言われるが、そもそも契約期間を満了しているのだから「派遣切り」もクソもない。世間が持つ派遣社員のイメージはまさにこの一般派遣の派遣社員だろう。

しかし、労働市場にはもう1つの派遣がある。特定派遣と呼ばれるものだ。特定派遣は、特定派遣会社に正社員として雇用され、特定派遣会社の指示に従って派遣先で働く。通常の派遣と異なるのは、派遣先で契約期間が切れたとしても特定派遣会社の社員であることには変わりないというところだ。雇用主である特定派遣会社が次の派遣先を探してくれるから、すぐに職を失うことはない。

勘の良い人はもうお気づきだろうが、特定派遣会社というのはまさに「コンサルタント」なのだ。ヨーロッパなどでは実際に特定派遣コンサルタントを名乗ることが珍しくない。日本においても、某特定派遣会社がなんちゃらコンサルティングに社名を変えて人気を稼ぎ、華麗に上場ゴールを決めたのは記憶に新しい。

名前のカッコよさで人気度が変わるから、特定派遣事業者の多くは自社のことを「アウトソーシング企業」などと呼んでいる。一般派遣と一緒にされたくないという思いもあるのだろう。法律上は細かな違いがあるが意味はほぼ同じだ。依頼主の指示を受けて他社の従業員の代わりに労働をするということに違いはない。

冒頭で引用した記事には、就活などでは「外資コンサルティングファーム」と呼ばれている人気企業が「アウトソーシング大手」と書かれている。これもやむないことだろう。特定派遣コンサルタントはほぼ同義なのだから。

無論、私はITコンサルタントを卑下しているわけではない。仮に特定派遣と同じだといわれて「卑下された」と感じるのであれば、それはあなたが特定派遣を卑下しているからであろう。

私自身は断じて職業の貴賤を話しているわけではない。コンサルタントが貴であり特定派遣が賤であると考えるような、恥ずかしげもなく職業に貴賤をつけるような三流の人間とは違うのだ。ファクトに基づいて実態を説明しているだけだ。この点は声を大にして明示しておきたい。

転職の際にはコンサルと認識されないことも覚悟しておこう

ITコンサルタントの方や、これからITコンサルタントになろうとしている方は次のことを肝に銘じておいてほしい。いくら自分のことをコンサルタントだと認識していようとも、周りがあなたのことをコンサルタントだと認識してくれなければ、転職の時には何の意味もない。

自分のことをITコンサルタントだと名乗った瞬間に、あなたは特定派遣会社と変わらない仕事をしていると思われているかもしれない。再三だが特定派遣の仕事を卑下しているわけではないことには注意してほしい。

ITコンサルタントを目指している学生や、すでに内定している学生も自分が取り組む仕事についてはよく理解すべきだ。IT系のコンサルティングファームにITコンサルタントとして内定しましたと社会人に話した時に、「システムインテグレーションやアウトソーシングの会社に営業として内定しちゃったのね」と思われているかもしれない。そのような社会人は心の中で勝手にあなたを見下しているかもしれないが、あなたにはおめでとうとしか言わないだろう。このような同情が生じるのは、世の中にコンサルタントと比べてアウトソーシングの会社を卑下する人もいるからだ。ひどい話だがそう考える社会人がいるということは事実なのである。

誤解しないでほしいが、私はITコンサルタントになるなと言っているわけではない。職業に貴賤をつける三流の社会人の意見など意味をなさないと考えるのであれば結構なことだ。私はただ、ITコンサルティングファームが世間からいったいどういう認識をされているのか、いったいどんな職業なのか、それを知ったうえでキャリアを選択すべきだと言っているのである。ITコンサルタントになるということがどういうことかを知ったうえでなおITコンサルタントになろうと思うのなら、あなたはきっとITコンサルタントとしての仕事に満足できるだろう。

ここまで読んで、私がITコンサルのことを特定派遣だと言って馬鹿にしているに思えた方は、もう一度最初から読み直すか、小学生の国語からやり直したほうがよいだろう。

ITコンサルタントという職業をどう捉えるかは結局自分次第なのだが、冒頭に引用したようにニュースサイトにも書かれる程度には、システムインテグレーションやアウトソーシングの会社という認識が一般的であるということは覚えておいてほしい。